Editorial
General Science

科学の発展のために、論文の信頼性向上を目指して(論文捏造問題との戦い)

Shinichiro Takezawa

Author and Article Information

Author infoゼネラルヘルスケア株式会社 General healthcare Inc.

PublishedMay 30 2014

CitationS. Takezawa (2014) 科学の発展のために、論文の信頼性向上を目指して(論文捏造問題との戦い). Science Postprint 1(1): e00023. doi: 10.14340/spp.2014.05E0005

Keyword Image-manipulation, Text copying, Image reuse, Figure and table data, Science Postprint


はじめに

医学を含む生命科学の学術論文では、しばしば電気泳動を伴う実験結果としてバンドを示した画像が掲載される。基準となるポジティブコントロールやネガティブコントロールと比較することで、バンドの有り無しや、時には定量的に実験結果を示し、議論する。

よって、生命科学においてはバンドは、議論のために極めて重要な証拠となるが、実験の再現が取れないとき、画像改竄が発覚し、問題になることがあった。最近ではSTAP細胞という衝撃的な幹細胞技術を発見1)した論文において論文捏造の疑いが発覚した。複数の画像加工を伴う改竄が明らかとなり、論文の撤回も議論され、第一著者の実験ノートや博士論文の検証まで行われている。共著者もオーサーシップとしての責任を問われ、メディアの取材や記者会見に追われている。更に研究者が所属する機関の管理体制の問題も指摘され、公的機関としての補助金の獲得においても影響があるかも知れない。

では、今回報道された画像加工は、この論文だけの特殊な事件だったのだろうか?論文捏造には、他の原稿からのテキストのコピー、画像の使い回し、画像加工、統計上の加工、完全な捏造など、程度と手法により、いくつかのパターンがある。これらの各手法はどれぐらいの比率で存在し、どれぐらいの数の論文捏造があるのだろうか?そして、学術論文誌として、これからどうしていったら良いだろうか?論文捏造のパターンごとに、対策を考える必要があろう。


論文捏造のパターン

1)テキストのコピー

テキストのコピーとは、非英語圏の国の研究者に多いのではないかと思われるが、他の論文から文章をコピーし、キーワードを独自に差し替えたものだ。著作権上の問題はあるが、研究内容が独自のものであれば科学研究上は大きな問題にはならない。

2)画像の使い回し

画像の使い回しとは、例えば別の論文でA細胞として示した細胞の写真を、また別の論文で同じ写真の一部を用い、A細胞とは異なるB細胞として示すような行為だ。これは明確な論文捏造行為であり、データを再提出するか、論文を取り下げる必要がある。背景として、綺麗で見やすい画像を求める学術雑誌の査読審査の要求に答えるため、似たような写真を利用したということも考えられる。実験は成功したが、その綺麗な画像がなかったということであれば、再現実験を行えば同様の結果が得られる可能性がある。しかし論文のストーリーを成立させるために別の実験結果の写真を引っ張り出してきたとしたら、実験の再現は取れるはずもなく、科学研究の発展上は大問題である。この研究を引用して、次の実験計画を考えた研究者や学生がいたとしたら、再現実験に数ヶ月を費やし、再現できないという結論に至ったり、場合によっては嘘の上塗りのように、ありもしない実験結果を論文にせざるを得なくなるかもしれない。

画像の加工も問題となった論文に見られた手法であるが、電気泳動の実験画像に多いと思われる。ベースになる写真に別の写真を被せたり、別々の実験の写真をつなぎ合わせる行為だ。背景などは画像の使い回しと同様と考えられる。

4)グラフや表のデータ

グラフや表で示すデータも、改竄される可能性はある。通常、コントロールの基準値に対し上がった、下がったということを議論するが、数値を改竄してしまえば、研究者は自由にストーリーを作れてしまう。統計の取扱においても改竄はあり得る。

これらの改竄手法は、単に図表を綺麗に見せるためであれば、再現実験の実験結果は似たような結果になり、実質的な被害は無いかもしれない。しかし、「ストーリーを作って、それに合わせる画像を選び、加工した」となると、実験の再現が取れる可能性は低く、引用して研究を進めようとした研究者に実質的な被害を与えてしまう。それは時間の無駄だけではなく、研究資材を無駄にしてしまい、研究費の消耗となる。

「論文というのはそういうものだから、割り引いて考えるものだ」と言ってしまえばそれまだ。我々Science Postprintは学術論文の供給者として学術雑誌の信頼性を高め、利用価値の高い論文掲載を目指したいと考えている。故に、我々は論文捏造の芽を積むための努力をすることを表明する。

我々の取り組み

実際的な我々の行動として、まず以下の2点に着手する。
1) 論文捏造を研究する
2) 捏造を検出する仕組み作り

1) 論文捏造を研究する

上記のように、論文の捏造には様々なパターンがある。どのような手法で行われており、どれぐらいの数があるのかも不明な点は多い。これらの捏造パターンを明確にし、過去の論文にどのような手法がどれぐらいの頻度で行われていたか、どのような研究者が捏造していたかを背景なども含め調査する。

2) 捏造を検出する仕組み作り

独自の解析ソフトウェアやノウハウを蓄積し、論文捏造を論文投稿の時点で食い止める仕組みを作るべきだ。

これらの活動を通し、Science Postprintを科学的信頼性の高い論文誌として位置付けていきたい。科学の発展には、個々の研究者の一つ一つの事実の積み上げが重要であり、揺らぎない科学の事実を積み上げる「場」として活用して欲しいと願っている。

注;実験で操作した特定のDNA、RNA、タンパクを検出する際、実験サンプルを寒天ゲル等で電気泳動を行い、各種発色液を用いてX線フィルムやスキャナで検出する。その際、目的シグナルが細長い長方形に見えるため、「バンド」と呼ばれている。

Reference

  1. Obokata H, Wakayama T, Sasai Y, Kojima K, Vacanti MP, Niwa H, Yamato M, Vacanti CA (2014) Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotency. Nature 505(7485): pp. 641–647. doi: 10.1038/nature12968.

Editorial is an opinion article on a topical issue. Editorials are not peer reviewed and only receive editing from internal editors. Editorial office may solicit Editorial article from an appropriate member of SPP Editorial Board.