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オープン世代のScienceに寄せて—将来のScienceにおける希望と課題

Shoko Mori

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Author infoGeneral healthcare Inc.

PublishedNov 19 2014

CitationMori S (2014) A thought to “Science for Generation Open”—Hope and concern to future of science. Science Postprint 1(1): e00037. doi: 10.14340/spp.2014.11E0002

今回のSPARC Japanセミナー [1–3] のキーワードは、SPARCのオープンアクセスウィークに合わせ、「オープン世代(Generation Open)」だった。これは、Scienceの世界に起こりつつある変革の主導者としての、若手研究者や学生の役割に注目したものである [4]

現在、Scienceの世界に起き始めている変革は、「Science」が、従来の、アカデミズムコミュニティーの内部で完結したものから、一般市民のための、一般市民による(もちろんアカデミアも含むが)Science(=科学研究・研究成果共有)へと変化しつつあるという大きな潮流である。
ただし、この流れは実は決して「新しい」ものではない。古来、科学は宗教、哲学、芸術といった、市民の世界・社会認知の原点と密接な関連を持っていた(アリストテレスやレオナルドダヴィンチ等)。これを考えると、現在の流れは、ある種の原点回帰の動きともいえる。

この変革において重要なことは、インターネットの発達により、「Science」が、一般市民にとっても手軽にアクセスできるようになったことと、さらにはソーシャルネットワーキングの発展により、誰もが容易に情報を発信でき、瞬時にそれに対する反応を得られるようになったことである。日本でも、個人が「面白い」と感じた科学論文を発信・共有するTwitterやブログ、科学研究を一般市民に対してもわかりやすく、かつ面白く伝える動画投稿サイトが人気となり、フォローされている。これらの情報発信者は多くが若手研究者や学生、大企業や研究機関に頼らないDIYのバイオ研究を志す「バイオハッカー」である。ソーシャルネットワーキングサービスに馴染んだ世代の彼らが、一般市民にとってScienceをより身近にする担い手となり、Scienceの「面白さ」を発信し、多くの市民がそれを享受し始めたのだ。

しかし一方、現在の市民のScienceに関する興味、関心は、興味を持っている市民の数、興味の対象ともに、まだ限定的なものであることも事実である。例えば、地球温暖化や地球規模での環境変化を語る上での重要なキーワードである「生物多様性」について日本の市民に聞いたところ、「言葉の意味を知っている」が16.7%しかおらず、「聞いたこともない」との回答が52.4%にものぼった [5]。これは、生態学を専門とする筆者にとってはかなりの衝撃であったのであるが、研究者と一般市民との間の認知のひらきを示す好例でもある。このような状況で、いくら科学者側が警鐘を鳴らしたとしても、市民へはなかなか届かない。こういった科学者サイドと一般市民サイドのあいだの温度差は、すべてのScienceの分野についてみられるものであろう。今後、「オープン世代」である若手研究者による、さらなる情報発信力強化と、それによる研究者と市民の間の認知差短縮が望まれる。

ただしここで注意が必要なことは、ソーシャルネットワーク上のScientificな情報の信頼性である。ソーシャルネットワークを使ってScienceを発信することのメリットの一つは、その手軽さである。これは、審査の厳しい査読付き学術誌での発表だけが、研究成果公表の手段のほぼ全てであった、研究者の閉塞感を打破する希望の光である。しかしこれは他方で、「査読」という、ある程度のフィルタリングと、ある種の「お墨付き」を経ていない多量の情報が、一般市民に向けて発信されることをも意味している。もちろん、査読された論文全てに全幅の信頼を置いて良いわけではなく、査読を経ていても、Scienceの発展に伴い、内容の誤りが発見されることや、悪意の有無にかかわらず、結果の記述ミスや解釈ミスが後々発見されることもある。それでも、現在でも「査読」は、研究の信頼性を担保するために重要な役割を担っているのも事実である。従って、ソーシャルネットワーク上のScience発信がさらに加速するであろう今後、一般市民はScienceについて、単にその情報の「面白さ」だけではなく、「信頼性」についても判断を迫られることとなろう。

将来、不確定な情報に踊らされないためにも、市民は、情報が信頼するに値するものであるかどうか、客観的に判断する能力を持たねばならない。これは何もScienceの世界に限ることではなく、メディアリテラシーの問題でもある。しかし、これからの教育は、義務教育、生涯学習を通じ、メディアリテラシーと共に、Scientificな情報について広く情報を集め、取捨選択する能力、つまりサイエンスリテラシーを高めていかねばならない。これは、ソーシャルネットワークにより、オープン世代の研究者や市民が共同してScienceのすばらしさ、面白さを発信し、Scienceを推し進め、発展させていく将来を描くうえで、基盤となるべきものであろう。

Reference

  1. SPARC Japan (2014) 第3回 SPARC Japan セミナー2014 (オープンアクセス・サミット2014 第1部)「「オープン世代」のScience」. Available from: http://www.nii.ac.jp/sparc/event/2014/20141021.html. (cited Oct 24 2014)
  2. (2014)「オープンアクセスサミット2014」に行ってきました. Dr’sブログ. 医療関係者向け専門情報エンジンMedister. Available from: http://medister.info/doctorsblog/?m=201410. (cited Nov 14 2014)
  3. (2014)言いにくいところまで言いました!「オープン世代」座談会. Dr’sブログ. 医療関係者向け専門情報エンジンMedister. Available from: http://medister.info/doctorsblog/?m=201410. (cited Nov 14 2014)
  4. SPARK (2014) 2014 Open Access Week theme to be “Generation Open.” Available from: http://www.sparc.arl.org/initiatives/openaccessweek/2014/announcement. (cited Oct 24 2014)
  5. 内閣府 (2014) 平成26年度環境問題に関する世論調査. Available from: http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-kankyou/index.html. (cited Oct 24 2014)
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